研究及び資料

龍馬の許嫁 千葉の灸

アップロードファイル 216KBアップロードファイル 33KB

千住の灸(千葉さな)
北辰一刀流千葉道場は、幕末に坂本龍馬も入門した有名な剣術の門派です。さなさんは坂本龍馬の許嫁として司馬遼太郎の著書『龍馬がゆく」に登場してきますが、実在の人物でした。

千葉家には家伝の灸があり、維新後、剣術がすたれてからは千住の地に根を下ろして、灸治療を生業にしていた。さな子も施術を行い、板垣退助も治療を受けたという。『龍馬伝』の中では、さなさんが、岩崎弥太郎にお灸をしている場面がありました。

江戸期の日本では、お灸がどれだけ生活に根差していたが伺いしれます。

さなが用いた灸法はもともと水戸烈公・徳川斉昭が会得していた中風の灸法で、斉昭から水戸藩御典医・石川曲直彦と千葉周作へ伝授され、周作から定吉へ、さらに定吉から重太郎とさなへと相伝されたと伝わる

兄重太郎(このころは改名した一胤という) が京都府へ出仕することとなり、さなも一緒に京都へ行き、灸治を行っている。ここでもさなの灸治は評判を呼んだという。明治二十一年千住中組九百九十三番地(硯千住仲町一番地辺) に治療所を新築した。この灸治院は評判を聞いた各人が、是非にと、さなの灸治を受けに来ており、おかげでかなりの繁昌をしたという。

その明治二十九年(一八九六)十月十五日、千葉さなは五十九歳でこの世を去った。重太郎の養子、千葉束(つかね) がさなの灸治院を継ぎ戦後も千葉家は代々灸治院を受継ぎ、昭和五十年代まで存在していたという。

写真1
足立区立郷土博物館より

写真2は
一眼レフのあるアジアンライフ

江戸時代鍼灸医療は

江戸時代は平均寿命28歳だといわれており、飢饉、疫病の流行期には17・8歳であったとの記録があります。それは、長生きが出来なかったからではなく、乳幼児の死亡が70%だったことで(現在は1000人に一人)全体の数字を押し上げてしまったようです。

乳幼児の死亡を除外してみますと江戸時代の60歳の日本人の平均余命がほぼ14歳というデータがあり、高度医療、終末期医療の発達した現代と比較しても決して比較にならない寿命(74歳)ではなかったと思われます。

また江戸時代には80・90歳の高齢者も多く、安永5年(1776年)には江戸で100歳前後の高齢者が10人以上もおり、寛政7年(1795年)の記録では越中富山の五箇の庄では100歳以上の老人がままあり、80歳以下では夭折(ようせつ;若死)といわれていたとの記録があります。

参考 北多摩薬剤師会HP


江戸時代、鍼を行う医師は「鍼医」と呼ばれ、外科医と同等かそれ以上の身分だった。一方、灸は自分でできる予防医学として各家庭に浸透していた。

庶民はまず灸やあん摩、または富山の薬売りが配る配置薬や常備薬で養生し、病が重くなれば鍼医を始め、外科医、内科医などの医者を頼り、最後には祈祷師にすがった。病気の原因を祟りと考えたこの時代では、祈祷師は今で言うホスピスケアのような役割を担っていた。

参考 医道の日本誌2008年

百姓たちは、消費生活を楽しみ、健康にも関心を持って、薬草や温泉を生活に取り込み、護摩壇に焚く香料・まじないの力までをフルに活用する。

パーキンソンと睡眠

眠ることは一番大事なことなんですね。kanai

ロチェスター医療大学の共同センター長であるメイケン・ネダーガード博士とその研究チームは、脳の持つ脳細胞内の老廃物を洗い流し排出するという機能が、深い眠りにある間に最も活発に働くことを発見しました。この研究は、10月18日付けでサイエンス誌で発表されています。

これまでにもネダーガード博士によって、「Glymphaticシステム」という脳細胞から老廃物が排出されるメカニズムが発見されていましたが、今回の研究は、このGlymphaticシステムの応用研究として実施されました。Glymphaticシステムは、脳細胞内に脳脊髄液(CSF)が流入することで、トキシンなどのタンパク質が洗い流され排出されるというもの。




一般的に体内の老廃物を処理する仕組みとしてリンパ系システムが機能していますが、脳はそれ自体が閉じた一種の"生態系"を維持しており、脳に何を入れ脳から何を出すかを独自にコントロールする複合システム(blood-brain barrier)を備え持つため、一般的なリンパ系システムは脳にまで及ばないことが分かっていました。しかし、脳の老廃物処理プロセスは、生きた脳の観察ができなかったため、長年研究者には避けられ続けた研究テーマでした。

しかし、「2光子励起顕微鏡」と呼ばれる新しい技術の登場により、脳の血流量や大脳のCSF流量を、被写体である動物が生きた状態で観察できるようになり、脳のシステムの研究が大きく進展しました。

アルツハイマー病やパーキンソン病のように脳細胞の欠損を引き起こす症状の多くは、脳内にダメージを受けたタンパク質が作り出され蓄積するという特徴があります。ネダーガード博士は「今回発見された脳のクリーニングメカニズムは、これらの脳疾患の解明と治療に貢献する可能性があります」と語ります。

従来、睡眠には記憶や学習内容を定着させる役割があることが分かっていましたが、睡眠時には外敵に襲われる危険が極めて高いことから考えると、睡眠のメリットよりもリスクがあまりにも高すぎるため、より大きな他の役割があるのではないかと考えられてきました。「今回発見された睡眠による脳のクリアランスシステムは、睡眠の果たす重要な役割の一つを示唆するものであり非常に興味深いものです」と睡眠に関する専門家のネイル・スタンレイ博士はコメントしています。

45分のウォーキングがパーキンソンに有効

やはり、歩くことがパーキンソンには良いのですね。歩行をすることで適度の疲労を起こさせ、筋肉に緊張を起こさせ交感神経の緊張を取ることになるからでしょうか。

最近、当院では悲観的に考えないように指導しています。朝起きたら、挨拶代わりに、介護者にありがとうと言おう。歩けるうちはまだ悪くない。震えは初期症状だからあまり気にするな。

結果はよいようです。ドーパミンは消極的になると出づらくなるのですから。

最近のアメリカの研究発表より

/////////////////

最近の研究で、パーキンソン病を患っている人で、症状が比較的軽い場合、日常的に行うウォーキングにより、体の運動能力を回復することができることが分かった。

パーキンソン病は、中枢神経の特定の神経細胞群が徐々に死んでゆく病気で、神経変性疾患と呼ばれており、その患者数は、アルツハイマー病についで、フランスでは2番目に多いとされている。

フランスでは、およそ15万人の患者が、パーキンソン病と戦っているが、この病気の治療法はまだ見つかっていない。患者の体に、震え、凝りが起こりやすくなり、運動能力が徐々に減少し、やがて、歩行困難な状態へと変化していく。


2日に1回、45分間のウォーキングの効果
今回、アメリカのアイオワ大学で実施された新しい研究では、2日に1回、45分間のウォーキングを行うと、パーキンソン病の進行を食い止めることが可能であることが分かった。

研究チームは、60人の患者に対し、45分間のウォーキング指導を週3回、6ヶ月間行った。

たとえ歩く距離が短くても、45分間歩くことで、運動能力を回復させ、疲労やストレスなどからも解放され、患者たちの注意力も増加した。

https://destinationsante.com/

パーキンソン病

本日お見えになった患者さんですが
パーキンソン病ですがまだ初期段階で薬は使っていない患者さんです。
震えがあり、歩行状態が小刻みであり顔は表情がパーキンソン様でした。

治療前の歩行テストは6m歩行は10.2秒 2分間歩行は72m
治療後は6m歩行8.2秒 2分間歩行は95m
と改善されました。
足取りが軽くなり、気分も良くなったそうです。歩行時にはすり足だったものが足が上がるようになりました。手も振れていました。

このように改善されると嬉しくなります。

結果は10月の日本伝統鍼灸学会香川大会に発表する予定です。

どうすれば安全安心:肩甲骨と肩凝り 1日3回、体操でゆがみ治す

アップロードファイル 41KBアップロードファイル 88KB

肩凝りはいろいろな症状のうち基本となるものです。
姿勢や循環の悪い状態を取り除くことが大切です。
姿勢は筋力をつけることが大事です。
内蔵披露は生活習慣の改善をすることです。

それらを補完するのが治療ですね。
鍼灸治療はとても有効的な手段と言えます。
それでも治らない時に薬を考えてください。



◇6時間半以上の睡眠/滑らかな動作を意識/ラジオ体操も効果的
毎日新聞 2014年05月15日 東京夕刊より


 「肩凝り」はやっかいな病気だ。専門家によると中学生のころから悩む人も多く、10年以上も苦しむ人がほとんどだとか。その肩凝りに関係していることから最近、「肩甲骨」の重要性が注目されている。肩凝りだけでなく体のバランスに影響を与えるらしい。上手に整える秘訣(ひけつ)を聞いた。【田村彰子】

 「頭は大変重く、8〜10キロあります。直接的には首から肩にかけての僧帽筋が支えていますが、それをコントロールして頭が傾かないよう微調整しているのが肩甲骨です。頭をたことすれば、僧帽筋はたこの糸、肩甲骨は糸巻きに相当します」。2005年から「五十肩・肩こり外来」を担当する東京女子医大准教授の神戸克明さんは、肩甲骨の役割をそう解説する。

 厚生労働省の2010年国民生活基礎調査では、肩凝りの自覚症状がある人の割合(有訴者率)は女性が人口1000人あたり129・8人。症状別では「せきやたんが出る」「眠れない」を抑え1位だ。男性も同60・4人で腰痛に次ぐ2位。

 神戸さんの五十肩・肩こり外来には月に延べ300人が訪れ、現時点で4カ月待ち。「ここを受診するのは、ただ座っているだけで痛かったり、顔色まで悪かったりする重症の肩凝り患者。それでもこれだけいるのが現状です」

 診察を続ける中で神戸さんが注目したのは、肩凝りを訴える人の多くに肩甲骨のゆがみがあることだった。そのゆがみには三つのタイプがある=上図参照。


拡大写真
 まず「扉タイプ」は肩甲骨が扉のように左右に開いた状態。スマートフォンの使いすぎやパソコン作業のしすぎ、頭を前に出した姿勢の人に多い。神戸さんによると患者の6割以上がこのタイプ。首の付け根が痛むほか、首から上の凝りが強いので頭痛が起きやすい。高血圧にも注意が必要だ。

 片方の肩甲骨が前に傾いた「おじぎタイプ」は片方の肩で長時間荷物を持ったり、足を組んだりする人に多い。左右の肩甲骨の高さに差があるので背骨に軽度の湾曲が出る。その結果、背骨の周りにある自律神経が圧迫され、寝られない、心臓が苦しいといった症状を訴えることがある。

 病気との関連性が一番高いのが「ハの字タイプ」だ。肩には筋肉と骨をつなぐけん板という組織があり、構造上、腕を上げると肩甲骨の突起に当たる。加齢で潤滑油役の関節液が減ると、けん板が傷つきやすくなり、炎症が起きて肩が上がらなくなる。普通、腕は真上に上げられるが、肩甲骨を押さえるとおよそ120度しか上がらない。残りの60度は肩甲骨の動きで上げているわけだが、肩の炎症で腕が上げにくくなると肩甲骨がその動きを補おうとする。すると、常に肩甲骨が「ハの字」に上がった状態となるのだ。

 肩が上がらない五十肩の人はこのタイプ。炎症が治りにくい糖尿病の人もなりやすい。夜や朝方に痛みやすいとの特徴もある。

 「患者さんの中には、複数タイプのゆがみが重なっている人もおり、そういう人ほど重症です」と神戸さん。

 さて対策である。右図は神戸さんが患者に勧める、肩甲骨のゆがみを取る主な体操だ。

 「最初は薬物治療を中心にしていましたが、根本原因を解消しないとだめだと考えました。それぞれのタイプに応じた体操を朝昼晩3回、仕事で忙しい人はせめて朝晩2回、少なくとも1カ月続けてみてください」と神戸さんは言う。

 もう一つ、重要なのが睡眠だ。「大学の整形外科を受診した人たちにアンケートしたところ、睡眠時間が6時間半以上の人の肩凝り発症率は、それ未満の人の半分でした。首を支える僧帽筋は大量の酸素を必要とする筋肉ですが、睡眠時間が足りないと酸欠になります。ゆがみ治し体操を続け、睡眠を十分にとることが大事です」

 眠る際は、膝を立てると骨盤が布団に密着し、背骨の湾曲が修正される。また、バスタオルを肩甲骨の幅ぐらいにたたんで背中に敷くと、肩や腕の重みで胸が反り、開いていた肩甲骨が寄るので効果的だという。

 日常の中で肩甲骨を動かすことを勧めるのは、数多くのプロスポーツ選手を診る理学療法士の山口光国さんだ。「脇を締め、肩甲骨だけを動かし(横から見て)肩で円を描いてみましょう。できなければ、肩甲骨を含む肩の機能が落ちている証拠です」。このチェック法そのものが肩甲骨をほぐす運動になる。

 さらに山口さんが勧めるのは(1)振り返る際は下半身を動かさず、胸から上で振り返る(2)しゃがむ時には片足を少し前に出し、膝をつま先より前に出しながら、太ももから膝に手をスライドさせながらしゃがむ、などだ。「日常的に美しい、滑らかな動作をするだけで肩甲骨のゆがみは治まります。掃除をしたり、1日20分歩いたりするだけでもいい。今はやりのラジオ体操も、肩甲骨には効果的な運動だと思います。バンザイをするだけでも肩はほぐれますよ」

 もちろん肩凝りの原因には腰の病気や目の疲れなどもあるが、肩甲骨のゆがみを自覚したら、こうした対策を試みてもよさそうだ。

血圧、治療目標値を緩和 治療効果を上げる狙い

アップロードファイル 54KBアップロードファイル 72KB

血圧に関して鍼灸治療は有効であろうか?
私は有効であると考える。

血圧は下がると脳血流が隅々まで行き渡らない。よって頭の働きが悪くなりボーとすることが多くなる。転びやすくなる。認知症になりやすくなる。高いのも問題だが血管に力があれば問題ない。肩こりしている状態が解消されれば血管が切れる心配が薄れる。

よって、鍼灸治療により、頭痛や肩凝りの症状を除去するようにすれば有効であると考える。結果として血圧が安定すればよいであろう。

では値はいくつが良いのか。

高血圧学会の基準値見直しがあったので新聞記事を掲載する。

... 続きを読む

「健康」は血圧147まで 人間ドッグ学会基準値変更

アップロードファイル 118KB

昨年の健康調査で私も悪玉コレステロールが高いので薬をのむように薦められたが、鍼灸治療と食生活の改善で望んで見る旨伝えた。

薬はどのくらいの期間飲めば改善されるかの問に・・・
生涯飲み続けなければ値が下がらず、血管が傷つき脳梗塞などになり危ない。

この言葉は忘れない。

この度の新聞報道にあるようにアメリカの基準値ははるかに緩いことを知っていたので、薬はなるべく飲まないようにしているのである。

下記要約

人間ドック学会が4月4日、血圧やコレステロール値、肥満度などについて行なった大規模調査の中間報告を発表。そこで、現在の健康診断で採用されている健康基準値と大きく差がある「新基準値」が公表された。

「新しい基準だと薬は飲まなくても大丈夫ですよね」。高コレステロール血症や高血圧で治療中の患者が、主治医に投げかける。これに対し、「いいえ、基準は変わっていません。これまで通り飲んでください」と医師は説明する。

不安が募るばかり。

例えば、悪玉とされるLDLコレステロールでは、男性(30〜80歳)で1デシリットルあたり72〜178ミリグラムなら健康な人となる。女性は年齢で異なるが、45〜64歳なら73〜183ミリグラムが健康な人の範囲だ。現在は人間ドックの判定基準が男女とも60〜119ミリグラムなので大幅に広がる。

血圧や男性の中性脂肪、肝臓の指標となるγ―GTPなども大幅に広がり、「健康な人」が増える方向だ。健康診断で異常値が多いと毎年指摘されるサラリーマンらにとっては朗報と受け止められた。

[日本経済新聞夕刊2014年5月2日付]より全文掲載
... 続きを読む

診察室での患者さんの様子から分かること2

アップロードファイル 61KBアップロードファイル 63KB

高齢者の多くは、物忘れが進行し、自分が認知症になることを非常に恐れています。物忘れを主訴に家族などに連れられて受診したにも関わらず、自分の物忘れを否定したり、関心を示さない場合には、認知症に進展している可能性が高いと考えられます。また、患者さんが質問に答えられないときの様子も、観察するとよいでしょう(図4)。




図4 質問に答えられないときの様子から判断する 家族に同意や助けを求めるために振り返る患者さんでは、アルツハイマー型認知症かレビー小体型認知症の可能性が高い。



 自分が答えられないことに対して意に介さない、無頓着である、困った様子を示さない、あるいは付き添いに手助けや答えを求めるような場合には、背景に認知症が存在する可能性が高いのです。家族や周囲の人々に手助けや同意を求めて振り向く現象は、head turning sign(頭部振り返り現象)と呼ばれています。

診察全体から受ける印象も大切
 一連の診察の中で患者さんから受ける印象も、認知症の判断する際に見落とせません(図5)。印象というと、科学的ではないように思われますが、実臨床で私はこの「印象」あるいは「第六感」ともいえる感覚が、非常に大切だと考えています。




図5 診察全体から受ける患者さんの印象から判断する アルツハイマー型認知症では首から下は元気だったり、全体に活発な印象を受けることが多い。



 例えば、「首から下は元気で活発」といった印象を受けるときには、アルツハイマー型認知症の可能性を考えます。逆に、「全体的に不活発」で、脱力や筋強剛が見られる、なんとなく元気がない患者さんは、血管性認知症あるいはレビー小体型認知症かもしれません。

 ただし、アルツハイマー型認知症であっても自発性の低下や意欲の減退、不関が前面に出てくる病型では、診察で不活発な印象を受けることが多いので注意しましょう。なお、車椅子に乗っていて状況の把握が全くできないときには、病型を問わず高度認知症に進展している可能性が高いと判断されます。

さまざまな認知症の患者さんの特徴
 典型的なアルツハイマー型認知症では、高度に進展しない限り、歩行障害や筋強剛、動作緩慢などの運動障害や嚥下障害は出現しないのが原則です。物忘れ症状は見られるものの、首から下の症状がない場合、アルツハイマー型認知症の可能性を考えながら診療を進めていくようにします。

 しかし、高齢者、特に女性では変形性膝関節症などの整形外科的疾患を合併している場合も少なくありません。アルツハイマー型認知症が疑われる患者さんで、首から下の症状を伴う場合、まずは整形外科的疾患あるいは他の脳神経疾患の合併を鑑別疾患から除外することが必要となります。

 多発性ラクナ梗塞が原因で生じる血管性認知症は、「細血管病変に伴う認知症」と呼ばれ、わが国で最も多いタイプです。細血管病変に伴う認知症では、血管性パーキンソニズムを合併していることが多いので注意しましょう。高血圧や糖尿病などで長年通院している患者さんで、なんとなく元気がない、整容がだらしない、物忘れが目立ってきた、尿失禁が多い、動作が鈍い、転びやすいといった症状が出てきた場合には、この細血管病変に伴う認知症を鑑別に挙げるべきでしょう。

 診察室に入ってくる際、幅広歩行(wide-based gait)を示す場合、血管性パーキンソニズムの有無や、認知機能に問題がないかをまず考えるようにしましょう。血管性パーキンソニズムの患者さんすべてが認知症に進展しているわけではありませんが、患者さんの多くが認知機能障害を来していると見られるからです。 

 レビー小体型認知症でパーキンソン症状を伴う患者さんでは、診察室に入室する際の歩行を観察すると小股で不安定な歩行や、前屈姿勢、上肢の振りが少ないといった特徴がしばしばみられます。また、病歴聴取時に「最近転倒しやすい」といった情報が得られた場合、レビー小体型認知症あるいは血管性認知症の可能性を頭に浮かべて診療を進めようにしましょう。

 パーキンソン症状は、筋緊張などの評価を行うと判断しやすい神経症状ですが、神経内科を専門とされない先生方の診察では、神経学的診察まで踏み込む方は少ないと思います。そのため、どうしても診察時の患者さんの様子から判断せざるを得ないのですが、表情が乏しい(仮面様顔貌)、四肢に振戦が見られる(レビー小体型認知症では振戦の出現は少ないと言われますが)、小股で不安定な歩行が見られる、前屈姿勢を示すといった場合には、パーキンソン症状の存在を疑うことができるのではないでしょうか。

診察室での患者さんの様子から分かること(日経メディカルより)

アップロードファイル 57KBアップロードファイル 59KBアップロードファイル 71KB

認知症 診察室での患者さんの様子から分かること(日経メディカルより)参考になりますので全文掲載します。カナイ


今回は、認知症に関する教科書ではほとんど触れられていない、認知症を判断するコツについて考えてみたいと思います。通常の診察では、患者さんは名前を呼ばれて、待合室から診察室に入ってきます。そして、先生方の前の椅子に座って診察を受けることになります。

 その一連の流れの中から、認知症を判断するためのヒントがいくつか見て取れます。患者さんが診察室に入ってくる際の歩行の様子、椅子に座るときの様子、さらに診察全体から受ける患者さんの印象などがそれです。今回は、これらのヒントに注目して、認知症をどう判断するか考えていきましょう。

患者さんの歩行の様子に着目する
 患者さんが先生方の診察室に入ってくる際、歩行の様子を観察すると、認知症の判断の手助けになる場合があります(図1)。高齢にもかかわらず元気に歩行、すなわち、しっかりした足取りで入室してくる場合には、アルツハイマー型認知症の可能性を考えます。なぜならばアルツハイマー型認知症では、病状が高度に進行しない限り、首から下の症状が出現しないからです。




図1 患者さんが診察室に入室する際の歩行から判断する アルツハイマー型認知症の場合、高齢の割に元気に歩行する患者さんが多い。



 逆に、小股で小刻み歩行をする、不安定で後方に倒れやすい歩行をする、歩行動作が緩慢であるといった場合には、血管性認知症またはレビー小体型認知症を考えます。もちろん、その際には頸椎病変や変形性膝関節症などの整形外科的疾患を除外することが必要と言えます。

 車椅子で入室してくる場合には、高度に進展した認知症に加え、錐体外路徴候あるいは片麻痺などに起因する何らかの身体疾患を合併している可能性が高いと考えます。もちろん、この考え方は絶対的なものではありません。例外はいくつもあり、ここではあくまでも原則を述べているだけであることを忘れないようにしてください。

患者さんの座る様子の観察ポイント
 診察室の椅子に患者さんが座る際の様子も、認知症の病型判断に役立つことがあります(図2)。アルツハイマー型認知症では、病状が進行するまでは、首から下に明らかな異常が見られないことから、多くの場合、患者さんは自分から椅子にスムーズに座ることができます。血管性認知症またはレビー小体型認知症では、四肢の筋強剛や動作緩慢を反映して、着座がぎこちないあるいは介助を要する場合が少なくありません。




図2 患者さんが椅子に座る様子から判断する 高度の認知症の場合、椅子に座る素振りも見せず、着座しようとしない患者さんが多い。



 着座するように伝えても、座るための動作を開始しない、あるいは興味がない素振りをする場合、病型を問わず、高度認知症に進展していることが多いと考えられます。なぜならば、それらの患者さんでは認知症が進んだ結果、聴覚的理解ができなかったり、行動の開始ができなくなっているからです。前頭側頭型認知症では、診察室でじっとしていられず、即座に部屋から出て行こうとする「立ち去り現象」と呼ばれる行動障害が見られることが少なくありません。

会話の様子も手掛かりになる
 診察の際、雑談の一環として「最近、物忘れをしませんか?」と尋ね、患者さんの回答の中身を吟味しつつ質問に答える際の様子を観察することも、認知症の有無を判断する手助けになります(図3)。先生方の質問に対し、患者さんが「物忘れなんかしない」「年齢相応だから問題ない」などと答えた場合は要注意です。